最後の日記と最初の日記

202403040305

今の年齢を公言できるのも今日で最後か、と思いつつ、そこまで深い思いはない。明日からは1年ぶりの韓国なので、今回は早め早めにと少しずつ荷造りをしている。1年ぶりだというのに語学勉強を怠ってしまったのでたいして話せないことは変わらない。現地で会う人やお店の人ともっと話せたら楽しさは倍増するだろうに。

長いこと治ってはぶり返してを繰り返している肌荒れがまたここ数日で下降気味で、症状が出ているのが顔なのもあって気にしてしまう。昼前に皮膚科へ。ステロイドを避けていたけど、弱めのステロイドを処方してもらった。早く改善されるといいけど、軽度のスギヒノキのアレルギーあるからイタチごっこになるような気もする。

四条河原町のあたりをぶらぶらしながら、軽食をとり、必要なものを購入。最近はまた観光客が増えてきている印象で、歩くのがしんどくなる。帰るその足でいつもの整骨院へ。ここ最近は頻繁に行っていたのもあって、「この前よりは柔らかくなってますよ!」と言われたが、たぶんまたすぐ戻っちゃう。万年肩こり腰痛。行き始めた頃はかなり手加減をして押してくれてたけど、最近は強めになってきていて、施術中ずっと歯を食いしばっている。でも痛みに耐えた後はちゃんと軽くなるから、耐えるべきなんだよね、わかってるのよ。絶好調な身体までは高望みしないから、そこそこ元気な調子でいられるようにという次の一年の抱負。

帰宅後に冷蔵庫整理の料理をして、ささっと食べて荷造りの続きを。急に思い出して、急いで旅行保険に入った。たいていは何事もなく終わるから無駄な出費になるけれど、この間北海道で盛大にこけてMRIやらCTやらを撮った身としては、安心材料はひとつでも確保しておきたいところ。

夜には母からプレゼントが届いた。月初めにも本が届いたけれど、二つ目のプレゼントとして花瓶と花。花はわたしが帰国してから届くように手配してくれたみたい。例年この時期には帰省していることが多く、二人でおいしいものを食べに行ったりしている。でも今年は帰らないことにしたから、たぶんこうやって贈り物を送ってもらったのは初めてだと思う。たくさんの贈り物と言葉をもらっても、それが負担とはならないような関係を築けていることが非常にありがたい。なんとも扱いにくい子供だったろうけど、母がわたしと適度に距離を保ちつつ、生き方を尊重してくれたから今の関係性があるのだと思う。

明日は4時半起きだから早めに寝ようと思って9時半にはベッドに入ったけど、全然眠れなくて、結局2時間近くごろごろしてただけだった。起きなきゃ!という意識がたぶん強過ぎて交感神経優位のままで、一度眠りに就いても2時間おきに目が覚めて、寝た気がしないまま出発。

5時台に地下鉄に乗ったの初めてだったけど、意外と人がいてびっくりした。国内線だけど、一度だけ飛行機を乗り逃したことがあって、もうそれ以来は保安検査を終えるまではずっとヒヤヒヤするようになった。身体はまだ温まらず固さを感じるけれど、頭だけは妙に冴えている。

空港で必要な手続きを全て終え、無事に離陸。飛行機の中ではiPadにダウンロードしてきた『そばかす』を6割くらい観た。意外とあっという間に着陸体制に入ってしまって全部観れなかった。仁川に着いたはいいものの、入国審査が大行列で、荷物の受け取りを終えるまでに結局1時間半くらいかかってしまった。大きなロス。昼ごはん→ホテルに荷物預け→수원へ向かう。

수원に住んでいる友人が、結構日程が迫ってから連絡したにも関わらず、서울に滞在する両日夜に会ってくれることになり、しかも수원で地酒づくりをしている方にも紹介してくれた。滞在時間が限られていたのが残念だったけど、今まで서울と부산にしか行ったことがなかったから、近場ながら新しい地域に行けたことがうれしかった。

紹介してくれた代表さんのおごりで食事と、自ら作っている막걸리を。もともと一時はがっつり菜食していたり、胃腸が弱めというのもあって肉の塊や脂っこいものは得意でない。どうしても日本でメジャーになる韓国料理はがっつり肉!って感じか、胃もたれしそうなものが多くてあまり好みでない。でも今回いただいた料理はどれもこれも本当に美味しくて、自社製造の막걸리も微炭酸で飲みやすかった(ソーダ割りは無限に飲めるほどおいしい)。わたしのなかで미나리最強説が有力になっています。

f:id:theworldofsilence:20240306182814j:image
f:id:theworldofsilence:20240306182811j:image
f:id:theworldofsilence:20240306182807j:image

街の至るところに残る日帝の植民地支配と朝鮮戦争の痕跡。そしてそれは今もなお失われたものとして、あるいは別の形として、さらには食文化として残っている。一人で来ても分からなかったことを地元の人に教えてもらえるなんて、本当に贅沢。

f:id:theworldofsilence:20240306183348j:image

不思議な出会いと古き良き音楽に囲まれた店にも、ロケ地になった우용우のお父さんのお店にも連れて行ってもらった。

f:id:theworldofsilence:20240306183538j:image
f:id:theworldofsilence:20240306183535j:image
f:id:theworldofsilence:20240306183541j:image

ホテルに着いたのは日付を回っていたし、就寝時間も2時近くなってへとへとだったけれど、本当にすばらしい一日になった。

 

何歳になっても新しい人と出会って、新しい関係を築くことはできるし、その度に新しい自分を知っていくことだってできる。この一年は自分の身の回りのことにたくさん振り回されて、選べなかった重荷を嘆き、あまりにも苦しくて泣きながら京都の街を歩いて帰ったことが何度もあった。少しでも自分が何に振り回されているのかをちゃんと理解したくて敬遠していた勉強も始めた。勉強したってすぐに何かが変わるわけではないけど、わたしはいつだって逃げ出すことができるしやめることもできるし、始めることだってできる。あらゆるしがらみを一気に手放すことはできないけれど、それでも逃げるための選択肢を自分のために残しておきたいと思えるようになったのは少しだけ成長したところだ。

f:id:theworldofsilence:20240306183943j:image

この一日で朝から晩まで、とても親しい人たちからメッセージをもらえて、好きな人と新しい人たちとも一緒に時間を共有できたのはなんとも幸福なことだった。唐突に決めた今回の旅だったけれど、自分のすぐ傍にたくさんの好きな人たちの存在を感じることができた、嬉しい一年の始まりだった。一人の人間として産み落とされた以上、あらゆる関係性を選べたわけではなかったけど、選んで選ばれて大切に想うことのできる関係性もあるのだという確かな感触があった。ある場所に行って、何かを食べて、急に香った匂いで、大好きな誰かの顔がすぐに思い浮かぶ。 相変わらず生きていくことにあまり積極的ではないけれど、今はまだもう少しだけ大丈夫って思える。