2022/12 きっと大丈夫

12/4

もともと日曜日に研究室に来る人は少ないのだけど、今日はわたし含めて3人(たぶん)しか来ていないっぽい。投稿論文の執筆あるいはその修正でこん詰めている人を何人か知っているから、みんなその締め切りを終えたということなのだろうか。館内のほぼすべてのライトがセンサー式だから、人がいないとどこもかしこも真っ暗で、怖い*1というよりもちょっと寂しくなる。自分にも寂しいという感情がちゃんとあるんだなと思ってすこしホッとした。

最近日記を書いていなかった、というよりも書く余裕がなかったという方が正しいだろう。論文もだんだんと終わりが見えてきて、とりわけ11月は疾走したという記憶しかない。季節の移り変わりを愉しむ余裕なんてものはなく、毎日起きてから寝るまでの時間を論文のことを考えて過ごしている。余裕がないとは言ったけど、自分の予想していたよりかは落ち着いている。周りからも焦っているようには見えていないと思う。実際、終章を除いてほぼすべて書き終えている。だから、まあ、提出は大丈夫。ただ問題は書けば書くほどに自分の乱文に打ちのめされて、こんなものしか書けないのかと落ち込みまくっていること。こんなもの人には見せられないと毎日真剣に思っている。論文とは、人に読んでもらうものであるはずなのに。ただありがたいことに、ゼミの先輩や友人が今月中に読んでくれることになってる。皆優しいので痛烈な批判はされないだろうなとは思う(というかすでに何度もゼミで報告してるし)。だけど、そのことがより不安になる。気遣いゆえに批判しないだけなのではとか、本当はこんなもの研究じゃないって思われてるんじゃないかとか、そういう妄想が膨らむ。昨日読んでいた(めちゃ好き)漫画『地獄くらやみ花もなき』の「目薬の副作用に被害妄想ってありましたっけねぇ」という皓さんの辛辣なセリフが自分にも刺さってくる。落ち込もうと思えばいくらでも落ち込めてしまうな。よくない。今年の初め、というか進学したときから、次は自分の納得のいく論文を書こうと思っていた。卒論は大学の制度上の問題があって、自分の思うようには書けなかったという後悔があったから。ただ、他者からの評価ではなく自分自身が納得することほど難しいこともないよなと最近は思うようになった。わかりやすい基準がない以上、どこまでいっても納得の基準がないし、どこまでいっても改善の余地しか見られないからだ。ここ数日、またわたしは納得のいかないものを提出しなくちゃいけないのかとガックリしていたけど、見方によってはそれは次へのモチベーションとしても考えられるかもしれない。今何をどう書くのかということも大切にしつつ、あくまでもこれは次にいくための踏み台のひとつであると思っているくらいのほうが心持ちとして幾分楽かも。

地獄くらやみ花もなき (1) (角川コミックス・エース)

 

12/5

皮膚科と整体。今日はバス運がすこぶる悪い。行きのバスは5分くらい遅れてきたんだけど、運転手の機嫌が悪いというか、口調が丁寧ながらも怒っているのが手に取るようにわかるようなアナウンスばかりをしていた。「扉の近くに立っていると閉まらずにバスが遅れて多くのお客様のご迷惑になります」「間違えて降車ボタンを押された方は速やかに申し出てください。バスが遅れてご迷惑がかかります」等々。要は、バスを遅らせるなよ?!ということらしい。いやそこまで言わんくても……と思った。帰りは帰りで、途中から隣に座ってきた男性の配慮が足りないというか距離感がバグっているというか。やたら近いし、体格の大きさ的にもう少し隣に配慮してくれてもいいんじゃないかと思うんだけど、肩も足もわたしの方に広げてくる。無理オブ無理すぎた。降りるときも自分のコンプレックスを逆撫でされるような出来事があった。こういうことが重なると、自分のちっとも頑丈そうに見えない体型と、他人にやめてほしいことをやめてほしいと言えない性格と、こういうときにあからさまに見くびられる女性性とが心底嫌になる。公共交通機関が年々苦手になってきている。

図書館で借りた小砂川チト『家庭用安心坑夫』を読み始める。この間読んだ『現代思想』の森崎和江追悼特集に寄稿された茶園梨加の論考で登場していて、気になっていたのだ。最近は自分の文章にウンウン唸ってばかりいるから、なるべくいろんな文体の文章を読んでどうにかできないかと目論んでいる。

現代思想 2022年11月号 総特集◎森崎和江―1927-2022―家庭用安心坑夫

 

12/7

ひさしぶりにゼミに参加した。Mメインのゼミではないから、論文を執筆している人や何かの締め切りに追われている人、単純に忙しい人はだんだんと姿を見せなくなる。わたしもそのひとりだ。10月までは、論文に集中しつつも週1でゼミには顔を出そうと思っていたのだけど、なかなか負担のある回がつづいていたのもあって、研究室にばかりこもっていた。おかげで論文には集中できたと思うけど、他者を介在させない文章を書くことがすこしこわくなった。延々とひとり相撲をしているような気持ち。あらためて、論文は独りよがりな文章になってしまったらダメだなと思った。

 

12/9

オフィスアワー、1時間半ほど。前日に実家から届いたリンゴを先生にもお裾分けした。論文のフィードバック、どうくるかなと不安だったけど、大丈夫だった。これまでの過程をすべて知っている先生相手にそう思ってもらうのは至難の業なのはわかっているけど、おもしろいと言ってもらえなくてすこし残念だった。わたしはおもしろいと思える研究をしたいんだと思う。一文一文丁寧に書いているなって伝わってくるとは言ってもらえたけど、なんだかうれしくなかった。ありがたいけれども。たぶん、ものすごい上手い文章を書くSちゃんのことをいつも頭に浮かべてしまうから、こんなこと思うんだと思う。文章の上手さと研究のおもしろさはイコールではないけれど、研究自体に意義はあるんだろうけど読めない文章というのが、わたしには存在する。読み手に伝える気ある?と思っちゃう。論文だってひとつのコミュニケーションだろって内心プンスカしながら読むときもある。でもおもしろさは、わかりやすい、という指標ともまた違うんだよなぁ。わかりやすくてもおもしろくない文章もいっぱいあるし。結局全部バランスなんだろうな。むずかしい。……まあ、それはともかく、踏みとどまっていた終章のアドバイスをいくつかもらえたので、よかった。年末までに完成させてもう一度見てもらう予定。

 

12/10

学部のときのゼミのメーリスから卒論発表会のおしらせがきた。その場にいることがすこし苦しかったゼミだし、後輩なんて知り合いいないし、先輩面吹かせて参加するのも嫌だからきっと参加しない。でもどんなテーマで論文書いたのか、すこし気になっている。来週の頭に題目と発表順のリストを送ってくれるらしい。ちょっぴりだけたのしみにしている。自分の論文が終わったら、久しぶりにかつてお世話になった先生たちに連絡して会いにいこうかなと思っている。ゼミが苦しかったのもあって、先生に直談判して3年4年と別のゼミにも参加していた(大学の制度上、ゼミの変更ができなかったため)。お世話になったのはこっちの先生方。ほんとうは今年度に入る前に会いに行きたいなと思っていたけど、自分の今のテーマをどう話そうかと考えていたらどんどん行きにくくなってしまった。自分の研究について話すことがいつまでたっても苦手だ。どう話すことが最善なのかがいつもわからない。でもさすがに修論書けたら会いに行けるかなと思っている。読んでもらえたらいいなとも思っているし。あと、D進することも報告しておきたい。まさか自分がこんな選択するなんて思ってもみなかったし、やっぱり先々への不安は大きいので相談もできればしておきたい。できるだけ一度つながった縁を絶やさないような精進すべし、自分。人と関わりつづけることも、積極的に新しい関係を持つことも得意ではないけど、少し邪な考えだけど、今後のことを考えるとこういう自分の性格はなるべく改善していったほうがいいんだろうなと、一応思ってはいる。人と関わることは好きだけど、得意ではないのだ。昔も、今もずっと。

 

12/11

父から不在着信が入っていた。嫌な予感しかしない。折り返しても留守番電話になっていたため、母に連絡を入れた。話を聞いたところ、思っていたほど酷くはなかったが、やはりという状態だった。父のことがずっとずっと重荷だ。自分の思想と、実際に父と対面したときの感情が矛盾していて、結局自分の思想なんてものは偽善的で作り物なんだろうと思う。そう思うと、自分の研究の根幹さえも揺らいでいくような気持ちになって、とても、精神衛生上、よくない。どちらにも振り切れない自分自身の弱さを感じる。人間として生きることはまったくもって容易いことではないね。身体に染み付いてしまった感覚が消えてくれない。堂々と、毅然とした態度で父と対面することができたら楽なのに。自分のコントロールがいきとどかないところで、身体には勝手に緊張が走り、動悸がし、身構えてしまう。涙ひとつコントロールできない。くやしくて、情けない。母と3匹に会いたくて年末は少しだけ帰省するけど、父にも会わないといけないのかと思うと今から胃がキリキリしてくる。でも、母を思うとこんな自分でごめんと思うし、申し訳なくなる。

朝っぱらから気持ちがズドンとしてしまったので、研究室に来ても、3時間ほどは集中してできたけど、そこからは頭のなかがうるさくて手につかなくなっている。そんなわけで、こうして日記を書くことで少し気持ちの落としどころを探ってみたり、お気に入りの漫画を読むことで精神を安定させようとしている(読み直したのは、『ホテル・メッツァぺウラへようこそ』と『1日2回』)。夜、帰宅した後はあたためている『女の園の星3』を読むと決めている。ドコさんの昨日の雑談配信の残り半分も聞くし、ナムさんのIndigoもじっくり舐め回すように味わうつもりだし、余力があればチャンソーマンの最新話も見るつもりだ。大丈夫。わたしはわたしを助けてくれるものをいくつも知っている。

ホテル・メッツァペウラへようこそ 1巻 (HARTA COMIX)1日2回 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

 

*1:暗いことよりも、誰もいない場所のセンサーが何かを感知して着いている方がちょっとぞっとする。最近家の玄関のセンサーも勝手に着いたり消えたりしている。何だよとは思うけど、こういうのは考えないに越したことはない。